君に溺れる僕に気付いて。

I want you to know that I’m addicted to you.

 

 

 

 

 

「大石・・・。行かないで、側にずっと居てよ。」

 

 

菊丸は自分のベットで涙を流していた。

 

 

 

『英二、全国大会終わっちゃったな。

 

でも、来年は2人で行こう。

 

目指すは全国ベスト3だ。』

 

 

 

『ベスト3?

 

大石ぃ、そんなの甘いよ。

 

俺達ゴールデンペアなら、来年は必ず優勝だよ。』

 

 

 

 

「一番近くに居たはずなのに・・・。」

 

 

 

 

昨日、菊丸は手塚と大石が重大な事を話しているのを聞いてしまった。

 

 

 

「手塚、俺達のペア、考えてもらえないかな?

 

手塚は強い、でも団体戦だ。

 

お前がダブルスに来てくれたら先手必勝で

 

心強いし、お前の肘の怪我も労われるだろ。」

 

 

 

「・・・あぁ。」

 

 

 

 

菊丸は部室の中をこっそり覗いた。

 

大石の背中が見える、それと同時に手塚の顔が見えた。

 

手塚は大石から視線をそらすと菊丸の目を見た。

 

 

 

 

『手塚!!ヤバイ気が付いてる・・・。』

 

 

 

 

「大石、その話・・・もう少し待ってくれないか?

 

俺がダブルスに行ったら部員が怪しむだろ?」

 

 

 

大石が椅子から立ち上がると、菊丸は裏側へと隠れた。

 

 

 

「手塚、お前は自分の事もたまには心配しろ。

 

副部長としての俺のことも信用してくれ。」

 

 

 

 

 

 

「・・・菊丸、大石は帰ったぞ。」

 

 

冷たく冷酷なまでの視線と声で菊丸を呼んだ。

 

 

「手塚・・・。」

 

 

「手塚は大石の事、好きなの?」

 

 

「・・・好きだ、お前が好きなるずっと前から。」

 

 

 

壁に寄りかかり菊丸は俯いた。

 

 

 

「俺から大石を取らないで・・・。

 

テニスのパートナーってだけでもいいから

 

大石を独り占めしないでよぉ。」

 

 

泣きたくもないのにポロポロと菊丸の頬を涙が通る。

 

 

「俺は大石と一緒に居たいだけだ。

 

側に居て、お互いを認め合って、そんな関係でいたい。

 

特別に恋人でなくても構わなかったんだがな・・・。

 

お前と大石との仲が気に成って・・・。」

 

 

 

「手塚は意地悪だね、大石に言いつけちゃる。」

 

 

 

付き合っていると言われて大石が自分をダブルス

 

のパートナーとしか意識していない事を酷く痛感した。

 

 

 

「俺、明日には忘れられるから。

 

大石が手塚と付き合ってるって事・・・。

 

だけどダブルスのパートナーだけは譲れない。

 

手塚が知らない大石を見せるなんてしたくない。」

 

 

 

手塚は途惑いながらも微笑をみせた。

 

菊丸もそれに答えた。

 

 

「正直、菊丸が羨ましい。

 

大石に心配掛けないお前が。

 

あいつが笑っている時は何時もお前の側だから。」

 

 

 

 

傷付いても側に居たいよ。

 

俺は君に夢中だから、側で微笑んでくれるだけで幸せだから。

 

手塚に見せない笑顔で俺に微笑んで・・・。

 

君に溺れる僕に気付いて・・・。

 

 

 

「うっ・・・うっ・・・

 

明日には言えるよ、笑顔でお早うって。」