BECAUSE I LOVE YOU

 

 

 

 

 

「跡部と俺ってどの位、戦ってんきたんだろうか。」

 

 

 

宍戸は自分の部屋のベッドに横たわりながらそう思った。

 

何回も試合をした、誰もが敵わないと思い宍戸を笑っていたが

 

跡部は宍戸が挑むたびに本気で宍戸を叩きのめしてきた。

 

中途半端な気持ちで跡部は戦わなかった。

 

それが宍戸には喜ばしい事だった。

 

 

 

「宍戸、お前の練習量でも俺には敵わないぜ。

 

お前のは効率が悪い練習の仕方だからな。」

 

 

 

跡部は試合をし終わった宍戸にそんな事を口にした。

 

宍戸自身もその事には気付いていたが練習せずには居られなかった。

 

 

 

「練習してないと不安なんだよ。

 

またレギュラー落ちするんじゃないかってな。

 

忍足と向日のペアに勝っても不安は消えないんだよ。」

 

 

 

跡部はコートに寝ている宍戸を見下ろした。

 

 

 

「不安が無かったら誰も成長しないぜ。

 

それにそこまで真剣にやっているんだ。

 

落ちても後悔はないだろ、みたいには。」

 

 

 

宍戸は静かに笑った。

 

跡部もそれを見て笑った。

 

自分の実力がどの程度なのか宍戸は知っていた。

 

宍戸は自分にはずば抜けた才能がないと分かっていなかった。

 

その分の努力を以前の宍戸は怠っていた。

 

 

 

「俺ってどこまで上に行けるか試した事なかったからな。」

 

 

「お前の努力は報われないかも知れないぜ。」

 

 

「それでも努力する事で俺は満足するんだ。」

 

 

 

外は真っ暗になっていた。

 

何時間、試合をしていたか2人にも検討が付かなかった。

 

 

 

「じゃあな、跡部。」

 

 

 

「あぁ。」

 

 

 

 

 

 

「・・・宍戸、起きないのか?」

 

 

宍戸を上から跡部が見下ろしていた。

 

 

 

「いつから来てたんだ?」

 

 

「ちょっと前から見ていたが、お前が気付かなかっただけだ。」

 

 

 

跡部は不満そうに宍戸の学習机の椅子に腰掛けた。

 

宍戸の部屋は狭く2人で居ても息が詰まりそうだった。

 

 

 

「愛してるってどういう事だと思う?」

 

 

 

跡部の突然の言葉に宍戸は咄嗟に声を出した。

 

 

 

「何、言ってんだよ・・。」

 

 

 

「それはな、相手をどれだけ知っているかって事だ。」

 

 

 

跡部は自慢げに宍戸の壊れたラケットを見せた。

 

 

 

「俺はお前を知っている。

 

誰よりもな・・・。」

 

 

 

 

「素直に言えないのかよ・・・。」

 

 

 

 

宍戸は呆れた顔で跡部を見た。

 

そのまま跡部は宍戸の近付き寝たままの宍戸にキスをした。

 

 

 

 

「素直じゃないのはどっちだ?」

 

 

 

「・・・それは俺かもしれないな。」

 

 

 

 

何時頃から俺は跡部に惹かれていたのだろうか?

 

いつも背中ばかりを追いかけてきたのに。

 

 

 

「俺は素直じゃないからな。」

 

 

 

だからこそ愛しているんだ、跡部は俺を。

 

俺は跡部を、愛しているんだ。

 

 

 

 

この距離感が心地いいんだ。