BOYS NEXT DOOR

 

 

 

 

 

DOOR.4 キス、よりも愛。

 

 

 

 

 

「ちょっとからかってキスしてやったんや。

 

そしたら真っ赤な顔して走っていってしもうた。」

 

 

俺は唖然とした。

 

 

「それって周りに人はいたのか?」

 

 

「えっ?

 

まぁ居たっていえば居たかも知れへんな。」

 

 

愕然とする俺を横目に忍足は笑って言う。

 

 

「跡部って案外“純”なんやね。

 

男にキスされたくらいで逃げ出してまうなんてな。」

 

 

俺だって初めて会った男にキスされたら、泣きたくもなる。

 

しかも人の見ているところでそんなこと。

 

明日にはホモと噂されて、学校中で噂になっているだろう。

 

 

「冗談でそんなことしたのか。

 

あの跡部のことだ、お前のこと一生表に出れない姿にされるぞ。

 

プライドの高い跡部がホモ疑惑を掛けられるなんて・・・。」

 

 

「まぁアイツも少しはプライド崩されてよかったんやない?

 

アイツは挫折しらなそうやからね。」

 

 

「・・・。」

 

 

「岳人くんは俺に嫉妬してくれてるの?

 

俺、嬉しいわ。

 

初めて見た時から可愛いって思ってたんや。」

 

 

冗談じゃないと思った。

 

誰ふり構わない男なんかと付き合えるかと思った。

 

俺は女の子が好きだけれど、浮気する奴は男でも女でも許せない。

 

何よりも遊び半分でキスすることが許せなかった。

「どうしたん、岳人?」

 

 

「お前は最低な馬鹿だ。」

 

 

「・・・馬鹿はちょっと・・・。」

 

 

忍足を教室から追い出して跡部の帰りを待った。

 

跡部は部室に篭っていたらしい。

 

その姿を想像すると少し笑える。

 

「跡部、大丈夫だったか?」

 

 

「あぁ、なんとかな。」

 

 

唇を何度も擦ったのか、跡部の唇は赤く腫れ上がっていた。

 

 

「その顔、メイドが見たら驚くんじゃない?

 

この前、顔擦りむいて帰って大騒ぎだったらしいじゃん。」

俺は悪戯半分に跡部を茶化した。

 

そうでもしないと跡部が泣き出しそうで怖かったから。

 

 

「跡部、噂にはならないと思うぜ。

 

今日は忍足がいろいろとやらかしてるから。」

 

 

「そう、だといいな。

 

でも噂になっても俺は平気だ。

 

アイツが一方的にしてきたんだからな。」

 

 

「まぁ跡部のファンに忍足が殺されてる確率の方が高いかな。

 

アイツら、男にも容赦なさそうだからな。」

 

 

跡部が笑う顔は久しぶりに見た。

 

嫌な奴だと思っていたけれど、昔から根は良い奴だと知っていた。

 

 

「岳人、アイツはお前にもあんなことするのか?」

 

 

「あぁ、口説かれてるけど、そんなことはされてない。

 

でもアイツは宍戸のこと可愛いとか言ってたからな。」

そんな会話をしている中で俺は忍足が本当にホモなのではないかと

 

心配していた。

 

 

「お〜い、跡部。」

 

 

いつもの言葉を伸ばす表現をするの声が聞えた。

 

慈郎の声で跡部はうれしそうに笑った。

 

 

「災難だったね、跡部。」

 

 

「そうだな、災難だった。」

 

 

「でも忍足は面白い奴だよ。

 

それにすごく良い奴。」

 

 

俺は慈郎の言葉に唖然とした。

 

あの忍足を良い奴と平然ということに。

 

そう言えば、慈郎も忍足と似たところがあると思った。

 

行動に移さないだけで、雰囲気とかも似ていた。

 

 

「そういえば忍足は岳人のことが好きなんだって・・・。

 

俺は跡部のことが好きだけどね。」

 

 

「そうやで、キスなんかよりも愛が大事や。

 

跡部にしたキスは愛やないで、冗談や。」

 

 

いつの間にか忍足が俺の背後に立っていた。

 

 

「愛してるのは岳人だけや。

 

一目ぼれって奴やね。」

 

 

俺が忍足の方を向くと忍足は俺にキスをした。

 

その後、沈黙の時間が長く続いた。

 

 

「愛って大切なことなんやで。」