Boys wanna be girls

 

 

 

 

「可笑しい、何で俺がこんな姿にならなければならない」

 

 

 

宍戸は鏡の前で絶句した。

 

見たこともない女の姿をした自分が写っていたからだ。

 

短く切ったはずの髪の毛は元の長さにまで戻っていた。

 

 

 

「母さんにそっくりだ・・・」

 

 

 

只鏡に写る自分を鏡越しに撫でた。

 

髪が長かった頃は、自分を女みたいだなんて思った事はなかったが、

 

今の宍戸には自分が女にしか見えなかった。

 

 

 

「おい、亮。

 

そろそろ、変われよ。」

 

 

 

「兄貴・・・・。」

 

 

 

「お前、服ぐらい着てろよ、アホ。」

 

 

 

顔を真っ赤にした兄が出て行った後で宍戸は服を着始めた。

 

下着姿だった所為もあって兄は顔を真っ赤にして

 

洗面所の外へと出て行った。

 

 

 

「・・・恥ずかしいとか、兄貴も感じるんだな。

 

部屋とかエロ本だらけのくせいに・・・。」

 

 

 

宍戸が下着姿のままで部屋に戻ると自分の制服が

 

女物のスカートである事に気付いた。

 

 

 

「・・・可笑しい、体だけならまだしも家族も部屋も女そのものになっている。

 

何でこんな事になったんだ・・・・」

 

 

 

「亮、早く行かないと朝連に遅れるわよ」

 

 

 

「分かったよ」

 

 

 

宍戸は仕方なく、スカートの制服を履いて学校に向かった。

 

少し短めに出来ている氷帝の制服を着ている宍戸は

 

風に吹かれる度に過剰に反応した。

 

スカートなんて履いた事のない宍戸にとって、それは寒いという事意外に

 

捲れてしまうというリスクを感じなければならない代物だった。

 

学校に着くと始めにテニス部で朝練をする事になっている。

 

ジャージは持って来たが、案の定スコートになっていた。

 

 

 

「宍戸!」

 

 

 

声を掛けてきた跡部に宍戸はビクッと反応した。

 

残念なことに跡部の声は男のままだった。

 

 

 

「跡部・・・」

 

 

 

「お前はいつから女になったんだ?」

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

スカートを履いている宍戸を部室に連れ込むとスカートを脱がそうとした。

 

それは決してイヤらしい意味ではなく、マジメなことだった。

 

 

 

「何でお前はスカートなんて履いて登校してんだ?

 

見られたらテニス部も終りだ!」

 

 

 

「それが、起きたらスカートになってたんだよ!」

 

 

 

宍戸の胸下ぐらいにしゃがみ込んでスカートを脱がせようとしていると

 

頭に柔らかい物があたった。

 

 

 

「・・・・まさか、コレは・・・」

 

 

 

顔を真っ赤にした跡部は頭に当たった柔らかい物を手で触れてみた。

 

 

 

「胸だよ!

 

起きたら着いてたんだ!」

 

 

 

ブレザーの上からでは分かり難かったが、胸が確かにあった。

 

シャツにすると余計にそれがよく分かる。

 

 

 

「跡部〜」

 

 

 

慈郎と忍足が部室に戻ってくると、跡部と宍戸を疑視した。

 

 

 

「跡部が、宍戸にセクハラしてる・・・」

 

 

 

「宍戸、速く逃げ。

 

女テニの部室に・・・」

 

 

 

宍戸が男だったことを忘れているのだろうか、2人は跡部を取り押さえると

 

宍戸を部室の外に連れ出した。

 

 

 

「跡部、悲惨・・・」

 

 

 

自分の身体の事よりもセクハラ疑惑を掛けられた跡部に同情した宍戸だった。