BRAND NEW DAYS

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きです・・・・。」

 

 

 

 

 

始めて知らない女の子に告白された。

 

中々可愛い子だったけど俺は付き合う気には成らなかった。

 

俺は好きな奴意外とは付き合わないと昔から決めていたからだ。

 

髪を伸ばしていた時から、いや、その前からずっとだ。

 

ちゃらちゃらと髪を伸ばしていたのに変な所が固派だった。

 

 

 

 

「ごめんな、俺・・・お前の事知らないし、それに・・・。」

 

 

 

 

 

「昨日、告白されてたな。」

 

 

跡部が俺に話しかけてきた。

 

今は三時間目の休み時間、跡部が俺に部活以外で話しかけて来る事は珍しい。

「何だよ、見てたのか。」

 

 

 

跡部は俺の机に腰を掛けて続ける。

 

 

 

「女泣かせだな、もう少しやんわりと断われないのか?

 

ウソでも“今はテニスで忙しいからそういう事は考えられない”とかな。」

 

 

 

人のやる事にいちいち首を突っ込む方ではない跡部が俺にここまで

 

絡んでくるのは珍しい。

 

 

 

「そんな事できるかよ、俺はそういうあやふやにする事が嫌いなんだよ。

 

それに相手だって気を持ったままじゃ・・・・。」

 

 

 

跡部は俺の顔を見ずに言う。

 

 

 

「お前は優しいのか冷たいのか分からねえな。」

 

 

 

部活の時に跡部が俺のラケットを握って素振りをしていた。

 

 

 

 

「・・・何やってんだ、跡部。」

 

 

 

「お前の練習量を見習おうと思ってな。」

 

 

 

暫く俺は跡部から目が離せなかった。

 

素振りをするその姿が何よりも綺麗に見えたから。

 

 

 

 

「努力は人を強く美しく変える。

 

その努力の分だけ魅力的な人間に成っていくんだ。」

 

 

 

強い眼差しに俺は動けなくなった。

 

部室の裏で2人きり、誰かの声が遠くから聞える。

 

 

 

 

「俺は努力をしているお前が好きだ。」

 

 

 

 

突然の告白、今まで最高のライバルだと思っていた男に告白された。

 

誰にも分からない空気が2人の間を過ぎる。

 

 

 

 

「好きって・・・。」

 

 

 

 

 

やっと出た声も風に掻き消されそうな位、小さな声だった。

 

 

 

 

「俺はお前が好きだった。

 

ずっと前からずっと・・・ずっと・・・。

 

お前は冷たい男だからな、俺の事も酷いふり方するんだろ?」

 

 

 

 

跡部の悲しそうな声なんて始めて聞いた。

 

俺の知っている跡部は傲慢で誰よりも強い男だという事だ。

 

 

 

 

「・・・そんな姿俺に見せるなよ。

 

俺の知ってる跡部は誰よりも強い男なんだよ。

 

色恋沙汰に何て興味のない・・・。」

 

 

 

 

 

失望したというよりも跡部の弱い部分を見てしまった事に

 

ショックを覚えた。

 

俺の目の前にいる男はこんなにも人間らしい奴だったのかと。

 

俺が張り合っていた男がこんなにも・・・・。

 

 

 

 

 

「・・・じゃあ、返すぜ。」

 

 

 

 

 

跡部は俺にラケットを渡した。

 

俺のラケットには跡部の滲んだ汗が染み付いていた。

 

 

 

 

「好きってどういう事だ?」

 

 

 

 

「憧れ?」

 

 

 

 

 

俺の憧れは・・・何だったのだろう・・・。

 

 

 

 

 

「俺はお前に憧れていた。」

 

 

 

跡部は微かに微笑んだ気がした。

「跡部、何で俺を好きに成ったんだ?」

 

 

 

「あぁ、それはな・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

あれから数ヶ月、全国大会も終わった頃。

 

跡部と俺は付き合い始めた。

 

うまく跡部に丸め込まれたのかもしれないが今は跡部が一番大事だ。

 

 

 

 

 

 

 

「それはお前の努力している姿が綺麗だったからだ。

 

それにその勝気な性格もな。」

 

 

 

 

 

 

新しい日々が始まった。

 

テニス漬けの毎日から少し余裕のできた毎日だ。

 

幸せを感じられる穏やかな日々だ。