背徳の都

 

 

 

 

 

 

 

 

Escape.1 逃避行

 

 

 

 

彼は言った、罪の無い国行こうと。

 

それが背徳の都だろうと一緒に行こうと。

 

許されない恋と僕達の思いを乗せて飛行機は青空を駆け抜ける。

 

 

 

 

「侑士、こんな事してよかったのか?

 

親に何も言わずに海外に行くなんて・・・・。」

 

 

 

「かまへんよ、親父は仕事。オカンは友達と旅行とか言ってたしな。

 

なら俺だって旅行の1つや2つしてもかまへんやろ?」

 

 

 

 

5月始め、世間はゴールデンウィークに沸いていた。

 

忍足は夏休みでは全国大会で旅行なんて行けないと向日を誘って

 

旅行に行く事にした。

 

跡部も珍しく部活を休み許可を出した。

 

普段なら絶対に出さないが跡部も海外に用事がある様だった。

 

 

 

 

「なぁ岳人、俺達の事話したんや・・・。」

 

 

「えっ?」

 

 

「親に話した・・・。」

 

 

「それでどうなった・・・の・・・?」

 

 

 

忍足は俯いたまま口を開かない。

 

目の前の座席の一点を見つめるだけだった。

 

 

 

 

 

「気の迷いとか・・言われたわ・・・。」

 

 

「気の迷い・・・。」

 

 

「でも俺は本気なんやで、だからこうして逃げ出してきたんや。」

 

 

 

 

向日は驚いた顔をした。

 

 

 

えっ許可取ったんじゃ?」

 

 

 

忍足は少し微笑み言う。

 

 

 

 

「俺達は今、逃避行中や・・・。」

 

 

 

 

彼らを乗せた飛行機は背徳の都に向かっている。