YOU are GIRLFRIEND. 長い紅い髪、誰が見ても女の子にしか見えない男の子がいた。 元々肩の上まである髪にエクステンションを着けているからか 余計に女の子のように見える。 胸上まで伸びた少しカールしたエクステンションを指で弄びながら 男の子は言った。 「侑士の趣味はよく分からない、 相手に女装させる男はいるけど、わざわざ自分まで女装するなんて」 「そうか? こんな風に街歩くのも悪ないと思うけどな」 長いストレートの黒髪が風で揺れていた。 この男も長いエクステンションを着けていた。 二人が並んでいる姿は到底、男とは誰も気付かないだろう。 そして氷帝学園の制服を身につけている所為か 異様な視線を感じていた。 氷帝学園は生徒数が多いことで知られている。 三年間、一度も同じクラスにならないことなんて当たり前のことだ。 それ以外にも一度も顔を合わせないことも珍しくない。 学校中に知れ渡っているのはテニス部レギュラーの数人と 生徒会の数人、あとは跡部景吾くらいだろう。 忍足と向日の顔を知っていたとしてもクラスメイトの数人くらいで 化粧をして女装をしている二人に気が付くのはテニス部のレギュラーくらいだろう。 「でも侑士って本当に手先器用だよな。 こんな髪の毛付けられるんだもん」 「まぁな、これくらいはな」
忍足は昔から姉の髪の手入れを手伝っていた。 昔から姉の言いなりだった。 「あぁこんな特技が身についてたんやな」 と忍足は岳人の髪をいじりながら思っていた。 「で、デートした後はどうするの?」 「これからか? そうやな、そのへんブラブラしたら、俺の家に行こうか。 エクステ取らないと帰れへんやろ、それに化粧も落とさんとアカンし」 そんなやりとりをしている二人を目撃している人物がいた。 青学の乾だ。 彼はいつもデータを集めるために学校めぐりをしているが 女装姿の二人には気が付くこともなかった。 ただ「氷帝の女子は化粧してもいいのか」と疑問に思って 二人とは反対の道を進み始めた。 「さっきの乾だったよな、侑士」 「あぁ、でもバレてへんと思うわ」 二人は家に着くとエクステンションを外し始めた。 エクステンションを外した顔ではさすがに男が化粧している様に見える、 得に忍足は。 「きもい、侑士」 「そんなこと言われてもな」 その頃、乾は氷帝学園の前に立っていた。 偵察とは裏腹に女子を観察していた。 「化粧をしている女子はいないか、 それはそうだな、化粧をしていい学校な訳ないよな。 するとあの二人は・・・」 「乾、何をしている」 「跡部か、見ての通り偵察だが」 「ほう、テニス部じゃない女子の偵察か。 知らない間に千石みたいになっちまったみたいだな、乾」 跡部が校門前にいた乾に声を掛けると乾は疑問を 跡部にぶつけてみた。 「この学校に化粧をしている女子生徒はいるのか」 「いや、俺は生徒会長だが、そんな生徒がいたら 真っ先に停学にしている。 まぁ下校途中で化粧をしたとしたら考えられるが」 「そうか、それじゃあ、少し赤み掛かった胸くらいまでの髪の子を知っているか。 それと黒髪の長い背の高い女子なんだが」 「赤み掛かった髪? 髪の色が薄い奴は頭髪届けを出してるはずだから、すぐに分かるはずだが・・・。 いや、後でソイツに俺から注意しておく」 乾はあの時見た二人を思い出していた。 あの身長差は確かに忍足と向日だということは分かっていたが わざわざ跡部に知らせることも無いだろうと思い。 偵察の予定だったが早々跡部に見つかってしまったので 学校に戻ることにした。 後日、跡部に気付かれた二人は数日間、部室の掃除が言い渡された。