Sweet Heart

 

 

 

 

真っ白な壁に大きなベッド。

 

何百という本の数にアンティークの机。

 

自分の部屋では考えられない様な大きな一人部屋。

 

 

 

「跡部、お前の部屋って俺の家よりでかいぜ。」

 

 

 

宍戸は荷物を跡部の部屋の隅に置いた。

 

 

 

「で、テニスコートまであるんだろう。

 

どうやったらこんな金持ちになれるのかね。」

 

 

 

溜息を吐くと跡部の方を見つめた。

 

 

 

 

「あぁ、俺の家は代々続く財閥だからなぁ。

 

嫌でも金が入ってくる。」

 

 

 

 

「へぇ・・・。」

 

 

 

 

宍戸は跡部の前でテニスウェアに着替え始めた。

 

女とは思えない男の身体。

 

それでも跡部は宍戸に引かれていた。

 

外見や性別ではなく、その性格に。

 

 

 

 

「跡部、悪いな。

 

借りてた参考書忘れちまったぜ。」

 

 

 

「あぁアレなら構わない。

 

俺にはもう必要ないしなぁ。」

 

 

 

跡部も宍戸とは反対を向き着替え始めた。

 

 

 

「あの参考書、中々分かりやすかったぜ。

 

得にお前の書き込みの所とかさ。

 

まあお前は頭がいいからな、アレくらい当然か?」

 

 

 

 

「当然だな、でも何で俺に聞きに来なかったんだ?

 

しかも参考書を借りるなんてな。」

 

 

 

 

 

宍戸は着替え終えて跡部の方を向いた。

 

 

 

 

 

「あぁ、それはお前に教わると勉強にならないからな。」

 

 

 

「俺に教わるとねぇ・・・。」

 

 

 

「すぐに忘れちまうんだよ・・・。」

 

 

 

「ほう、それは相当な馬鹿だな。」

 

 

 

「おいっ。」

 

 

 

 

跡部は宍戸の口調がきつくなったのを確認しテニスコートに行くように促した。

 

 

 

 

「こんなところで喋ってないでテニスで勝負したらいいだろう。」

 

 

 

「そのつもりでここに来たんだよ。」

 

 

 

跡部の家のテニスコートは室内にある。

 

6面のコートは誰にも使われていない雰囲気を感じさせた。

 

 

 

 

「ここ、跡部以外使わないのか?」

 

 

 

「此処は俺の家のプライベートスペースだ。」

 

 

 

「違う、親とかも使わないのか?」

 

 

 

「仕事が忙しいからな、俺しか殆ど使わない。」

 

 

 

 

跡部はボールを着き始めた。

 

 

 

 

「あの参考書、お前には簡単すぎたんじゃないのか?

 

本当ならあんなのお前の家になかったんじゃねぇの?」

 

 

 

 

一瞬、跡部の動きが止まりボールはころころとコートの外へと転がった。

 

 

 

 

「気付いてたのか?」

 

 

 

「お前の使ってる参考書には書き込みなんてないからな。

 

俺のレベルに合わせてしかも分かりやすくするなんて相当だな。」

 

 

 

「何が言いたい?」

 

 

「俺って愛されてる・・・。」

 

 

 

「馬鹿な子ほど可愛いって事だよ、バカ。」

 

 

 

 

跡部は宍戸に聞えない様に呟いた。

 

 

 

『俺のSweet Heart(可愛い人)。』