White Snow

 

 

 

 

 

 

 

「白雪姫ね、こんな女子供向けの話・・・。」

 

 

向日岳人は1冊の本を手に取った。

 

少し狭い本屋の片隅にある開店する本棚に置かれた小さな絵本。

 

子供の頃は女の本と思って読む事も無かった。

 

 

「しらゆき姫か・・・。」

 

 

 

“白い肌の女の子の話。”

 

 

“雪の様に真っ白な肌と黒檀の様な漆黒の髪に

 

血の様に真っ赤な唇を持った美しい女の子。”

 

 

“継母の嫉妬で殺されそうになる。”

 

 

 

「世界で一番美しいのは誰?」

 

 

「侑士・・・。」

 

 

 

忍足は向日の後ろから驚かす様に声を掛けた。

 

 

 

「どこに行ったか、探してもうたやろうが・・・。」

 

 

「あぁ悪かったな。

 

今日発売の雑誌が欲しかったから寄ったんだ。」

 

 

 

向日は自分のサイフを取り出した。

 

そして脇に抱えていた雑誌を手にレジ向かった。

 

 

 

「白雪姫ね・・・。」

 

 

忍足はその本を手に取った。

 

 

「この世で一番美しいのは誰?

 

それはな・・・・。」

 

 

 

「侑士、早く出ようぜ!」

 

 

 

店の外に出ると雪がちらついていた。

 

 

 

「おい、侑士。

 

雪だぜ、雪・・・。」

 

 

「こないな時期に降るなんて珍しいな。」

 

 

大きなテニスバッグを背負い直しながらマフラーも巻き直す。

 

 

「今日はいい日かも知れない。」

 

 

 

向日はうれしそうに自分の鞄から手袋を取り出した。

 

 

俺って準備万端、これでいつ積もってもOKじゃん。」

 

 

「そないに簡単に積もらんよ。」

 

 

忍足の声に何でそんなに浪漫が無いんだよと向日は思った。

 

 

 

 

「白雪姫やんな、自分。」

 

 

「はっ?」

 

 

 

「白雪姫や、綺麗な白雪姫。

 

かに嫉妬されて殺されへん様に俺は守ったるわ。」

 

 

 

向日の顔は寒さで白く唇は赤くなっていた。

 

 

 

この世で一番美しいのはお前やで、岳人。」

 

 

「何言ってるんだよ。」

 

 

2人は雪が降る中を手を繋いで帰った。

 

 

「今年は雪が積もるといいな。」

 

 

「そうやな、白雪姫さん。」