アンドロイド 〜ANDROID〜
 
 
 
 
 
 
 

桜の日 A CHERRY DAY

 

 

 

「越前くん、二週間に一回は検診に来てくださいね。

君の身体は特殊なんですから」

 

リョーマは退院する時に医師に言われたことを思い出した。

一度死んでしまった自分の体を維持するためには

こまめな検診が必要だとは分かってはいたが

リョーマにはそれよりも気がかりなことがあった。

病院でコードに繋がれていた少女のことだ。

自分と同じである彼女が何故、コード無しには生きられないのか

疑問に思っていた。

プロトタイプということは彼女はリョーマ以前に

あの場所に来たのだろう。

そして彼女は中学に入学する前に事故にあっている。

しかもリョーマと同じ場所で。

リョーマは二週間ぶりに病院を訪れていた。

 

「・・・リョーマくん・・・」

 

久しぶりに聞いた彼女の声に少し安心した。

彼女の声はリョーマの入院生活にとって掛け買いのない

ものになっていたからだ。

数日ではあったものの、彼女の看病で

リョーマは自分の自体を飲み込めたのだ。

 

「竜崎、久しぶり。

元気そうでよかった」

 

適当に言葉を積むいだリョーマは本題を切り出した。

病院へ向かう途中からずっと聞こうと思っていたことだった。

 

「竜崎は中学校に行きたいって思ってる?

まだ青学に席はあるし、教室にも机が置いてあるよ」

 

「・・・私は背中のコード無しでは生きていけないから

学校は無理なの、それに席だってそろそろお母さんが・・・」

 

「お母さんって、娘が学校に行くのは嫌だってこと?」

 

「違うの、私のコードが中々取れないから

博士がそろそろ親を騙すのも限界だろうって言うの。

家には毎日電話を掛けてるんだけれど、病状が急変ってことで

死んだってことにしようって話してたの。

そしたら私はここから出られないけれど、

両親は心配しないで生きていけるの。

でも本当は外の世界に行きたい、皆と同じように学校に行きたいの」

 

「両親を騙して、もしもその後にコードが取れたらどうするの?

1人で生きていかないといけないことになるんだよ」

 

桜が散ってしまった庭がリョーマの目に写る。

 

「私は死んでるの。

あの桜と同じように散ってしまったの。

もう両親を騙しているわけにもいかないし」

 

リョーマは桜乃の言葉で自分が一度死んだのだと実感した。

そしてもう自力では心臓を動かしていないということも聞かされた。

 

「私たちは博士にアンドロイドと言われているわ。

ロボットのことだよね。

私たちは機械に生かされてるの。

私はコードが無ければ、ただの死体にもどる。

ほんの少しの間、生きていられただけで十分だよ。

もう楽になりたいの」

 

リョーマは言葉に詰まった。

アンドロイドと呼ばれているのは人としての機能が

機械によって保持されているからだ。

元々死人の2人には生はもう存在していない。

機械のスイッチを切ってしまえば、もう動かなくなってしまうのだから。

生きてはいない、人ではない、彼らはアンドロイドなのだから。

 

「でも竜崎は生きたいって思ってる。

俺は知ってる、この外の世界で生きられるようになる方法を」

 

「本当に知ってるの」

 

「もしも間違っていたら、探しに行けばいい」

 

リョーマは桜乃の手を取った。